給付型奨学金制度を創設。教育費の負担は軽くなる?

【監修: R&C株式会社 ファイナンシャルプランナー 菱村真比古】

文部科学省の「平成28年度学校調査」(*)では、大学の進学率は現役で49.3%と過去最高となり、
短大・専門学校を含めた進学率は71.2%に上ります。

高等教育機関への進学者が多数派となるなか、経済的な事情で進学を断念する子どもたちの支援や、
奨学金の返還が重荷になっている問題が政府内で議論されてきました。

そして文部科学省は平成28年12月に、奨学金制度の拡充を盛り込んだ
「高等教育進学サポートプラン」(*1)を公表し、給付型奨学金制度が平成29年度から先行実施されます。

返済負担の軽減を含む奨学金制度の拡充策は、本当に子どもたちの進学を
後押ししてくれるのでしょうか。

(*)文部科学省「平成28年度学校調査」
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2016/12/22/1375035_1.pdf

(*1)文部科学省「高等教育進学サポートプラン」
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/12/__icsFiles/afieldfile/2016/12/26/1380888_1_1.pdf

 

【目次】
◆ 返さなくてもよい、給付型奨学金制度がスタート
◆ 
低所得世帯では、無利子の奨学金が借りやすくなる
◆ 
困ったときはぜひ利用したい、大学の授業料減免制度
◆ 
奨学金の返還に補助も。人材確保のため自治体や企業が支援

◆ まとめ

 

返さなくてもよい、給付型奨学金制度がスタート

「高等教育進学サポートプラン」でもっとも注目されているのは、給付型奨学金制度の創設です。
現在、大学生のおよそ半数が奨学金を利用していますが、
うち8割は日本学生支援機構の貸与型奨学金です(*2)。

たとえば自宅から通っている国立大学の学生が、無利子の第一種奨学金を月額45,000円、
4年間貸与を受けると、216万円を月12,857円で14年にわたって返済しなければなりません。

有利子の第二種奨学金の貸与月額は120,000円までとなっていますが、
学費や生活費を奨学金に頼りすぎると、多額の借金を抱えて卒業することになります。

返還義務のない給付型奨学金制度は、進学の経済的なハードルを下げ、
進学の後押しをすることが期待されています。

 

<創設される給付型奨学金制度>

【対象】

・住民税非課税世帯の人、または児童養護施設退所者等社会的養護が必要な人
(平成29年度は、私立の大学等に自宅外から通学する非課税世帯の人、
または児童養護施設退所者等社会的養護を必要とする人)

・高校の学校長等による推薦にもとづいて日本学生支援機構が決定

【給付額】

・月額2~4万円

・児童養護施設退所者等社会的養護が必要な人は、別途一時金として入学時に24万円

この制度の対象者は6.1万人、先行実施の29年度は2,800人と推計されています*。
しかし家計基準を非課税に限定し、学校長の推薦という条件を付けているため、
経済的な事情で進学が困難な生徒すべてが奨学生に採用されるとは限りません。

また実際に必要な学費や生活費と比べると、給付額は十分とはいえません。
ただし貸与型と併用できるため、全額貸与型を利用するよりも返還負担は軽減されます。

(*2)日本学生支援機構「平成26年度学生生活調査」
http://www.jasso.go.jp/about/statistics/gakusei_chosa/__icsFiles/afieldfile/2016/03/14/data-14_all.pdf

(*)文部科学省平成29年度予算(案)
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2017/01/12/1381131_01_1.pdf

 

低所得世帯では、無利子の奨学金が借りやすくなる

日本学生支援機構の貸与型奨学金には、無利子の第一種奨学金有利子の第二種奨学金があります。
第一種奨学金は家計要件のほか、評定平均値が3.5以上という成績基準が設定されています。

平成29年度からは低所得者世帯の学生について、この成績基準が撤廃されます。

また家計基準と成績基準の両方を満たしていても、予算がなく、
無利子の第一種奨学金が利用できない場合がありました。

そこで基準を満たした希望者全員が借りられるように、
平成29年度から第一種奨学金の貸与者を増やすよう予算が組まれています。

有利子の第二種奨学金も、利率の下限を0.1%から0.01%に引き下げられます。

このように無利子の枠が拡大されたり貸与型の利息が減ったりすることは、
利用する学生にとって確かにメリットにはなります。

しかし、貸与額そのものが数百万円に及ぶと、元本だけでも返していくのは大変です。
また低所得世帯では、高校生のときから貸与型の奨学金を借りている場合もあり、
大学卒業時に7年分の負債を抱えてしまいます。

返済が終わらないうちに子どもが誕生すると、その子の教育資金の準備にも影響しかねません。
そうした悪循環を断ち切るためにも、借りる金額そのものを少なくする対策が必要と思われます。

 

困ったときはぜひ利用したい、大学の授業料減免制度

文部科学省の平成29年度予算では「学びのセーフティネットの構築」のため、
給付型奨学金制度以外に、国立大学と私立大学の授業料減免等の充実に対する
予算が盛り込まれています。

これにより授業料減免の対象者は、
国立大学で平成28年度の約5.9万人から29年度は約6.1万人へ、
私立大学は28年度の約4.8万人から29年度は約5.8万人に増える見込みです(*3)。

国立大学の授業料減免は比較的知られていましたが、
私立でも減免する大学あることは知らない人も多いのではないでしょうか。
私立大学全体の学生数に比べるとわずかといえますが、減免される可能性が広がります。

また、多くの大学では独自の給付型や貸与型奨学金制度があります
進学前だけでなく進学後に家計が悪化したときも、まず授業料の減免制度や給付型奨学金など
返さなくてよい支援制度がないか、調べてみましょう。
申請時期が決まっているものもあるので、早めに大学の窓口などに問い合わせてください。

(*3)平成29年度文部科学省予算(案)
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2017/01/12/1381131_01_1.pdf

 

奨学金の返還に補助も。人材確保のため自治体や企業が支援

日本学生支援機構の貸与型奨学金制度では、返還が全額または一部免除されるのは、
次の2つのケースに限られます(*4)。

①本人が亡くなったときや、精神や身体の障害により働けなくなった場合
②大学院で第一種奨学金を貸与され、在学中に特に優れた業績を上げた場合

一方で、人口減少や地方創生に対応するため総務省と文部科学省が協力し、
自治体の「奨学金を活用した大学生等の地方定着の促進」を支援しています。

これは、地方大学に進学する学生向けに無利子の奨学金貸与枠を確保したり、
その自治体に定住して働く人の奨学金返還を支援するものです。

現在、日本学生支援機構のHPで奨学金返還支援制度の情報提供を行っている自治体は、
佐世保市、喜多方市、旭川市、津山市、新居浜市です(*5)。
このほかにもUターンやIターンの若い人を確保するため、
奨学金返還の補助など行っている自治体があります。

また企業のなかにも人材確保対策として、また福利厚生として、
奨学金を返済している社員に補助を出して支援するところが出てきています*。

奨学金の返済が不安なら、就活の際に自治体や企業が行う返還支援制度の有無も
参考にしてみてください。

(*4)本学生支援機構HP
http://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/henkan/hoho.html
http://www.jasso.go.jp/shogakukin/chihoshien/sosei/seido/sousei_shi.html

(*5)産経新聞HP
http://www.sankei.com/economy/news/160621/ecn1606210005-n1.html

 

まとめ

給付型奨学金制度は急遽決定された感があり、対象や金額が限定されているため、
進学を控えた高校生や保護者が満足するものではないかもしれません。
また、制度を拡大するためには財源が問題となるでしょう。

現時点で子どもを持つ家庭でできるのは、授業料減免や奨学金の情報を集めて
少しでも経済的な負担を軽くすることと、後悔しない進路を選ぶことです。

そのために受験を考えている大学などがあれば、オープンキャンパスにはぜひ足を運んでください。
授業内容だけでなく、学費や独自の奨学金制度などの情報を得ることができます。

経済的な不安があるのなら、学ぶことをあきらめる前に、
まず在学している高校や大学に相談しましょう。

監修者プロフィール

R&C 菱村真比古

R&C株式会社 菱村 真比古(ひしむら まさひこ)
中高の教員免許を持つ異色のファイナンシャル・プランナー。結婚や住宅購入のほか、社会保険制度が複雑に絡むライフプランをシンプルに紐解きます。柔軟かつ合理的な相談対応力で活躍中の「女性の人生を豊かにクリエイトするお金と保険のエキスパート」です。

得意分野 : ライフプランニング、住宅ローンアドバイス、相続の準備と対策
保有資格 : トータル・ライフ・コンサルタント(生命保険協会認定FP)、ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定)、DofD認定プロデューサー(T-PEC社認定)、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)、公的保険アドバイザー®

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Writerこの記事を書いたライター

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