いま大注目の「フィンテック(金融×ITの融合)」は、私たちの生活と保険をどう変える?

【監修: R&C株式会社 ファイナンシャルプランナー 菱村真比古】

いま話題の「フィンテック」は、
ファイナンス(金融)とテクノロジー(IT技術)の融合
を意味する造語です。

ネットワーク化が進み、スマホが一般化したいま、銀行やクレジットなど、
さまざまな金融サービスがより便利に使いやすく進化しつつあります。

そしてその流れは、将来に備える保険にも影響を与えています。

【目次】
◆ フィンテックって何?
◆ 金融業界のIT化が止まらない

◆ 安全運転なら保険料が安い? ビッグデータを活用した新しい保険も登場
◆ 健康状態のデータで生命保険料も変わる?
◆ まとめ

 

フィンテックって何?

フィンテックという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
フィンテックはFinance(金融)とTechnology(技術)を合わせた造語です。

現在、いろいろな金融機関が自社のIT化を進め、
顧客の私たちは実店舗に足を運ぶことなくインターネット経由で
金融サービスを利用することができます。

しかしこのように金融機関が主体となって、
自社のITサービスを顧客に提供するようなことをフィンテックと
呼んでいるわけではありません。

たとえば銀行Aのオンラインサービスにログインし、
お金を振り込んだりするのはフィンテックとはいいません。

またクレジットカード会社Bのオンラインサービスで、
毎月の利用明細を確認するのもフィンテックではないのです。

フィンテックとは、IT技術によって今までになかった
革新的な金融商品や金融サービスが生まれていく状況のことです。

たとえば、フィンテックから生まれたサービスのひとつに、
最近TVCMが盛んに流れている家計簿サービスの「マネーフォワード」があります。

「マネーフォワード」を使うことで、自分が毎月どれくらいの収入を得て、
どこでどれくらい使っているかを総合的に把握することができます。

たとえばお給料は勤めている会社から銀行Aに振り込まれ、
その口座からクレジットや光熱費、毎月の生命保険料などが
毎月引き落とされるとします。

これまでは入出金明細は銀行Aのオンラインサービスで確認、
クレジットカードの利用明細は個々の会社のオンラインサービスで
それぞれ確認する必要がありました。
「マネーフォワード」を利用すれば、
銀行・クレジットカード・保険・証券などのお金に関する情報は
一括で管理できるようになります。

金融機関ごとに別々のオンラインサービスにログインする必要はありません。
自動的に自分に関係する複数の金融機関の情報を自動的に集めてくれるのです。

情報技術により複数の金融機関の情報を束ねることに加え、
この「自動化」でいままでの家計管理の仕方を大きく変えました。

この家計簿サービスでは、自分がどこにどれだけのお金を使ったか、
自動的にグラフなどでわかりやすく視覚化されます。
「今月は食費に使いすぎた」「収入に対して家賃が高すぎる」などが
一目瞭然でわかります。

従来も家計簿ソフトはありましたが、「これは食費」「これは遊興費」など、
分類は自分で整理する必要がありました。

ところが「マネーフォワード」では、口座から引き落とされる
家賃・食費・交通費・保険料など、出費は自動的に分類されます。

もちろん現金での支払いもその都度入力できるので、
瞬時に家計簿に反映されます。

現金払いで受け取るレシートはスマホで撮影するだけで、
どこで何を買ったのかを自動で判断し、
家計簿に取り込むという機能もあります。

ここでは身近な家計簿サービスを例にとってフィンテックをご説明しましたが、
このほかにもさまざまな分野で新しいサービスが登場しつつあります。

もうひとつの身近なサービスとしてはスマホ決済でしょう。

スマホ決済サービス大手には「ペイパル」があります。
海外にあるオンラインショップで買い物をする際、ペイパル経由で支払うことで、
セキュリティの高い決済ができるというサービスです。

クレジットカードの情報はペイパルに登録しておくと、
お店にクレジットカード情報を知らせる必要がないため、
安心安全な買い物ができるようになります。

このほかにも資産管理・運用アドバイス、仮想通貨「ビットコイン」、
クラウドファンディング(投資を集める)、
ソーシャルレンディング(個人間融資やP2P融資)、会計、財務など、
いろいろな分野でサービスが立ち上がっています。

さらに最近話題のビッグデータやAIを資産運用に活用する動きもいます。

金融業界のIT化が止まらない

若い人はイメージが湧かないかもしれませんが、
昭和の時代は毎月の給料が封筒に入った現金で、
社員一人ひとりに直接手渡しされていました。

給料を物理的な重さで感じていた時代です。
景気のいい会社のボーナスになると、
一万円札がたくさん入った封筒がその厚さで立ったという
エピソードもあるくらい、世の中では現金が使われていたものです。

しかしIT化が進んだいま、お金は電子化された「情報」に変わりました。
給料はお札の束ではなく「情報」として自分の銀行口座に振り込まれます。
このようにお金が情報として扱われるようになった現在、
金融業界のIT化はますます進行しています。
その最前線がフィンテックといえるでしょう。

世界の金融センターとして知られる英国やシンガポール、
フィンテックのサービスで起業が盛んな米国、消費社会へと突き進む中国など、
さまざまな国でフィンテックは新しいビジネスチャンスとして注目されています。

こうした国に比べると出遅れている印象の日本ですが、
政府ではフィンテックの推進を掲げて金融庁や経済産業省が中心となり、
議論を始めています。

2014年9月 金融庁 金融審議会決済高度化スタディグループ発足
2015年3月 金融庁決済高度化ワーキンググループ・金融グループワーキンググループ発足
2015年10月 経済産業省 フィンテック研究会発足
2015年12月 フィンテック研究会 フィンテックの情報交換・相談窓口「FinTechサポートデスク」発足
2016年5月 「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」成立.
2016年4月 日本銀行の決済機構局内に「FinTechセンター」が設置
2016年9月 金融庁と日本経済新聞社 「FinSum フィンテック・サミット」開催

フィンテックの規制整備のため、国内の法律改正も進んでいます。
2014年にはフィンテックのひとつ、投資型クラウドファンディングの
利用促進のための金融商品取引法の一部改正が行われました。

また2016年の通常国会では、
「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための
銀行法等の一部を改正する法律案要綱」で
銀行法や資金決済法などがまとめて改正され、
金融関連IT企業との提携の容易化などが盛り込まれました。

インターネットでの支払いや決済で注目される仮想通貨については、
2016年に仮想通貨交換業を内閣総理大臣への登録制とする改正資金決済法が成立し、
2017年の4月から施行されます。

仮想通貨の利用者保護の枠組みが整ったことで、
仮想通貨が普及することが期待されています。
最近では電力や都市ガスなどの公共料金を仮装通貨で支払うことができる
サービスも登場しています。

安全運転なら保険料が安い?
ビッグデータを活用した新しい保険も登場

フィンテックのは、保険の分野にも大きな影響を与えています。
フィンテックは金融(ファイナンス)+技術(テクノロジー)の造語ですが、
保険(インシュアランス)+技術(テクノロジー)=インシュアテック
という新しい言葉も派生しています。

保険も金融商品のひとつです。
保険の世界も、IT技術で便利になりつつあることの現れといえるでしょう。

このインシュアテックにより、新しいタイプの損害保険商品が生まれています。
そのひとつが欧米などで普及しつつある、
加入者の運転データをもとに保険料が算出される「テレマティクス保険」です。
この保険商品では、自動車に取り付けられたデバイスから加入者の運転や
経路のデータが自動的に取得・アップロードされ、運転技術が診断されます。

こうした情報をもとに加入者一人ひとりで異なる保険料が
決まるという仕組みです。

これまでの自動車保険は加入者全体の事故発生率や保険金支払額などから
一人ひとりの保険料を算定し、一律の金額を徴収していました。

加入時はみな同じ保険料を支払いますが、
事故を起こすとその後の保険料が上がるというものです。

ところが新しい「テレマティクス保険」では、実際の運転データが分析され、
安全運転をするドライバーと認められると保険料が割安になります。

日本でもすでにこの「テレマティクス保険」の販売が始まっています。
いままで加入者全員同じ金額だった保険料ですが、
収集した運転データをビッグデータとして蓄積・分析することで、
より個人にフィットした保険料が算出される時代となりました。

具体的に「急発進・急ブレーキの少ない運転で保険料をキャッシュバック」
「走行距離を保険料に反映」など、安全運転をするドライバーなら
保険料がお得になるサービスが提供されています。

こうした保険料の割引は、ドライバーの安全運転への意識を高める
きっかけにもつながっていくでしょう。

健康状態のデータで生命保険料も変わる?

自動車保険だけでなく、生命保険の分野にもフィンテックの影響が及んでいます。
自動車保険との共通点は「データを自動的に取得するデバイス」と
「加入者個人に合わせた保険料」です。

自動車保険では運転データを取得するデバイスを自動車に取り付けることで、
ドライバーの運転技術を判別し、安全運転のドライバーの保険料を
低くすることが可能になりました。

それと同様に生活習慣や健康状態を取得するウエアラブルデバイスがあれば、
取得したデータとビッグデータを分析することで
加入者の健康リスクをより正確に判断し、
リスクの大小を個人の保険料に反映させることも可能になるでしょう。

すでにいくつかの保険会社では、ビッグデータの分析と活用を
新しいサービスにつなげようという動きがあります。

米国にある健康保険会社Clover Health Insurance では、
データ分析を駆使した予防医療に力を入れることで、
巨額の投資を得たことがニュースになりました。

Clover Health Insuranceでは患者の医療データを分析し、
病気の予防につながる提案を医療機関や患者双方に行います。

病気を予防し健康でいることができれば、保険会社の負担金は減ります。
患者の健康増進をIT技術で実現しようという取組みが、
投資会社から評価されたといえるでしょう。

日本国内での取り組みとして、一部の保険会社は数年前からビッグデータを解析し、
喫煙者と非喫煙者の病気発生率を把握し、
非喫煙者の保険料を割安にするという各種保険商品を発売しています。

また、このほかにも健康診断の結果の良し悪しや、
ゴールド免許の保有有無によって保険料が割安になる保険商品も存在しています。

日々の健康は毎日の生活から生まれます。
何があるかわからない将来に備えることは大切ですが、
それと同じくらい健康を維持するための日々の生活習慣が大切です。

たとえば煙草を吸う、運動をしない、栄養不足の食事など、
健康に悪いとされている生活習慣にはどういう疾患のリスクがあるのか。

そうした予想をビッグデータから導き出し、
個人の疾患リスクをより細かく分析できるようになれば、
将来も健康でいる確率の高い加入者は保険料が安く、
そうでない加入者は保険料が高くなるという時代がくるかもしれません。

病気になるリスクが低い人の保険料を安くすることは、
いまのうちから健康を維持しようというモチベーションに
つながっていくことでしょう。

まとめ

私たちの生活を大きく変えていく新しい技術の潮流、
フィンテックについてご紹介してきました。

IT技術の進化によって小型で安いデバイスで個人の情報がより細かくようになり、
それが自動的にアップロード・分析される未来が来ることで、
将来に備える保険はより個人に特化したものになっていくことでしょう。

規制に守られた日本は、諸外国に比べると“フィンテックの波はこれから”
といわれていますが、
やがてフィンテックやインシュアテックも当たり前
という未来がやってくることでしょう。

いずれみんながほしいと思っていたけれど実現不可能だった保険商品が、
技術の進化に引っ張られるかたちで登場するかもしれませんね。

 

監修者プロフィール

R&C 菱村真比古

R&C株式会社 菱村 真比古(ひしむら まさひこ)
中高の教員免許を持つ異色のファイナンシャル・プランナー。結婚や住宅購入のほか、社会保険制度が複雑に絡むライフプランをシンプルに紐解きます。柔軟かつ合理的な相談対応力で活躍中の「女性の人生を豊かにクリエイトするお金と保険のエキスパート」です。

得意分野 : ライフプランニング、住宅ローンアドバイス、相続の準備と対策
保有資格 : トータル・ライフ・コンサルタント(生命保険協会認定FP)、ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定)、DofD認定プロデューサー(T-PEC社認定)、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)、公的保険アドバイザー®

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Writerこの記事を書いたライター

LAIFadmin

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