年金の受給資格期間を25年から10年に短縮。無年金の人は本当に減る?

公的年金を受け取るためには「年金受給資期間」を満たしている必要があります。これを25年から10年に短縮する改正「年金機能強化法」が、2016年11月16日に国会で成立しました。

消費税率が10%に引き上げられた場合、10年に短縮することはすでに決められていましたが、今回の改正は施行時期を平成29年8月に前倒しするものです*1。政府は、この短縮によって年金を受け取ることができようになる人は約64万人*2に上るとしています。

この年金受給資格期間とはどのようなものでしょうか。また本当に無年金や低年金問題は解消するのでしょうか。

【目次】
◆ 将来、無年金になる人を増やさないための法改正
◆ 保険料の免除期間は年金受給資格期間になる?
◆ 年金受給資格期間が足りないときの救済策や、受給額を増やす方法はある?
◆ なお残る国民年金の未納問題と低い年金額
◆ まとめ

将来、無年金になる人を増やさないための法改正

公的年金は老後の生活の支えになるものですが、定められた年金受給資格期間を満たさないと受け取れません。現行制度では年金受給資格期間が25年に1か月でも不足すると受給できず、保険料も掛け捨てとなってしまいます。

実際に65歳以上の無年金者42万人のうち約4割が、10年以上しっかりと保険料を納めていました(平成19年(旧)社会保険庁調べ)*3。

こうした事情を踏まえ、平成24年に成立した「年金機能強化法」*4では、納付した保険料に応じた給付を行い、将来無年金になる人を出さないよう受給資格期間を25年から10年に短縮することが盛り込まれました。

一方、受給資格期間の短縮には、約650億円(満年度ベース、平成30年度)*5の支出が見込まれます。財源として消費税を充てるので、施行時期は消費税率の10%引き上げ時に合わせることになっていました。

その後、消費税率アップを2019年(平成31年)10月に延期することになったため、施行時期も先に延びる予定でした。しかし、無年金は早急に対処すべき課題として、平成29年度中に施行する改正法案が国会に提出され可決されたものです。

保険料の免除期間は年金受給資格期間になる?

経済的な事情で保険料を納めるのが難しい場合、国民年金には免除や猶予の制度があります。もし免除期間などが長くなったら、受給資格期間に影響するのでしょうか?

年金受給資格期間には以下の(1)~(3)がカウントされ、免除や猶予の期間も含まれます。

保険料を納めた期間

・年金の第1号被保険者として国民年金保険料を納めた期間(自営業や学生など)
・第2号被保険者の期間(会社員や公務員など)
・第3号被保険者の期間(第2号被保険者に扶養されている配偶者。保険料の納付は不要)

保険料の免除期間・猶予期間

・免除期間(法定免除、全額免除、一部免除。免除割合に応じて年金額に反映)
・猶予期間(学生納付特例、納付猶予。追納すれば年金額に反映)

合算対象期間(カラ期間)

・20歳~65歳未満の間で、過去に国民年金が任意加入だった時期に任意加入せず、国民年金の被保険者の対象となっていなかった期間など

もし保険料が払えない事情があっても、免除や猶予の手続きを取らず、保険料も納めていない未納期間は、年金受給資格期間には含まれません。
自分の加入状況は、年金事務所から毎年届く「ねんきん定期便」やインターネットの「ねんきんネット」サービスで確認することができます。

年金受給資格期間が足りないときの救済策や、受給額を増やす方法はある?

公的年金の加入期間は20歳から60歳未満です。この間に受給資格期間を満たせないときは無年金となります。また満たしていても加入期間が短いほど、年金の受給額は低くなります。もし60歳までに受給資格期間が不足し、満額の老齢基礎年金を受け取りたい場合は、任意加入という方法があります。

国民年金では、60歳から65歳までの間、加入期間が480月に達するまで任意加入ができます。さらに昭和40(1965)年4月1日以前に生まれて受給資格期間を満たしていない場合は、70歳までの間、任意加入が可能です。

免除や猶予は、2年さかのぼって申請可能なので、収入が減って未納となっていた期間があれば申請して受給資格期間にプラスすることができます*6。
また未納分や猶予、免除期間がある場合は、保険料を一定の要件のもとに後から納付して受給額を増やせます。

国民年金に加入している人なら、月400円の付加年金保険料を上乗せして納めると、「200円×付加保険料納付月数」分の付加年金額が受け取れます。

たとえば1年間付加保険料を納めた場合、保険料は「400円×12月=4,800円」。受け取る付加年金額は「200円×12月=2,400円」となり、2年受給すると元が取れる計算です*7。

また会社などに勤めている人は70歳になると厚生年金の加入資格を失いますが、受給資格期間が不足している場合は、その期間を満たすまで任意加入を申し出ることができます*8。

任意加入や付加年金については、市町村役場の窓口で相談してみましょう。

なお残る国民年金の未納問題と低い年金額

受給資格期間の短縮で、新たに年金を受け取れる人は増える見込みです。しかし納付期間が10年(120月)の場合、受け取れる老齢基礎年金は「780,100円(平成28年度満額)×(120月÷480月)=195,025円」となります。

この間に厚生年金に加入している期間があれば、その分老齢厚生年金も受け取れます。しかしそれでも年金額が少なく、年金だけでは基本的な生活費をまかなえきれないのではないかと考えられます。

また国民年金の納付率は、平成27年度は63.4%(法定免除、全額免除、猶予分を除く)にとどまっています。一部免除となっている人でも4割が未納で、経済的な理由から国民年金保険料の支払いが難しい人が少なくありません*9。

受給資格期間の短縮により無年金者は減っても、低年金の人の生活保障をどうするかという問題は残っています。

まとめ

年金の生活保障機能を強化し、持続可能性を高めるための法律が「年金強化法」*10です。

・パートなど短時間労働者の厚生年金・健康保険への加入を拡大する
・遺族基礎年金の支給対象を父子家庭に広げる
・基礎年金の国庫負担の割合2分の1を恒久化する
・産休期間中の保険料を免除する

といった項目はすでに施行されています。保障機能を保持しながら財政基盤を確保して、長期にわたって制度を維持していくために、政府は給付の見直しも含めた制度改正を検討しているところです。

ライフスタイルが多様になっている今、個人も制度変更をキャッチアップし、将来の安心を確保するために上手に制度を利用しましょう。

参照:
*1「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案」
*2厚生労働省HP「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の概要」
*3「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案」
*4政府広報オンライン「平成26年4月から年金機能強化法が施行」
*5厚生労働省HP「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の概要」
*6日本年金機構HP 高齢任意加入
*7政府広報オンライン「平成26年4月から年金機能強化法が施行」
*8日本年金機構HP 付加年金
*9厚生労働省「平成27年度の国民年金の加入・保険料納付状況」
*10政府広報オンライン「平成26年4月から年金機能強化法が施行」

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