働く世代が、がんとともに生きる時代に知っておきたい制度

日本人の40代からの死亡原因で「がん」は1位(*1)となっています。
国は国民の生命や健康にかかわる重大な病気として、平成18年に「がん対策基本法」を制定し、がん対策に取り組んできました。

とくに働く世代では、治療のほか経済的な不安や治療と仕事との両立が課題となっています。

もしがんになったとき、医療費や仕事の継続に対してどのような支援や制度があるのでしょうか。また、自分で備える方法はあるのでしょうか。

働く世代ががんになったら? ~ 国が進めるがんとの共生

医療が進歩して全がんの5年相対生存率は64.3%(*2)と、がんになっても社会生活を続けることが可能になっています。

しかし働いているがん患者のうち、体力の低下や治療などによる勤務調整を理由とした依願退職や解雇は3割を超えています(*3)。

仕事を辞めると、医療費のほか本人や家族の生活費をどうまかなっていったらよいか、という経済問題に直面します。

国はがん対策基本法に基づいて、平成24年にがん対策推進基本計画を立て、さらに平成27年12月に策定した「がん対策加速化プラン」では、がん患者や経験者への就労支援の必要性が高まっていることから「がんとの共生」を柱のひとつに掲げています。

仕事を継続するには、症状のコントロールや職場など周囲の理解や支えが重要であり、次のような就労支援の仕組みを提示し、がん対策を推進しています。

● 拠点病院における仕事の継続を重視した相談支援の実施
● ハローワークにおける就職支援の全国展開、事業主向けセミナーなどの開催
● 産業保健総合支援センターの相談員による企業などに対する相談対応などの支援
● 企業向けのガイドラインの策定及び普及啓発

医療費の公的な支援・助成制度

がんは入院や手術、長期の治療に加え、保険が適用されない最新の治療などで、医療費が高額になることがあります。

公的医療保険では、小学生から69歳までは自己負担は3割です。また月々の自己負担額が高額になっても、自己負担限度額を超えた分が払い戻される、高額療養費制度があります。

自己負担限度額は、70歳未満では5段階の所得区分ごとに決められており、1年間に3か月払い戻しがあると、4か月目からはさらに自己負担限度額が引き下げられます。

公的保険では、保険が適用されるものと適用外の最新の治療などを合わせて受けると、全額自己負担となります。

しかし厚生労働大臣が先進医療と認めたものであれば、診察・投薬・検査・入院料など通常は保険適用となる部分にはそのまま公的保険が適用され、先進医療の部分のみ自己負担となります。

そのほか医療費の負担を軽くする制度として、小児がんを含む小児慢性特定疾患医療費助成制度、障害者医療費助成制度、ひとり親家庭等医療費助成制度など本人や家族の状況、所得などの要件によって利用できる制度があります。

また1年間で支払った医療費が一定額を超えた場合は、医療費控除により税金が還付されます。

このようにさまざまな制度があり、自治体によって異なるものもあります。

療養生活を支える制度

医療費の負担軽減や助成以外に、療養中の生活を経済的に支える各種制度があります。

介護保険

介護保険は65歳以上の人のほか、がん末期など特定疾病で介護が必要となった40歳以上65歳未満の人も対象です。介護保険の自己負担分が定められた上限を超えた場合は、その分が払い戻される高額介護・高額介護予防サービス費制度があります。また医療保険を利用しているときは高額医療・高額介護合算制度によって、自己負担分が軽減されます。

健康保険の傷病手当金

健康保険に加入している場合は、療養による長期の休業に対して傷病手当金が1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する金額が給付されます。ただし、自営業者などの加入する国民健康保険にはありません。

公的年金の障害年金

人工肛門や人工膀胱の造設、咽頭部の摘出を受けた人のほか、日常生活で介助が必要だったり、就労に著しい制限を受ける状態のときも、障害年金が受け取れることがあります。

身体障害者手帳

身体に障害が残った人に公布され、人工肛門や人工膀胱といった補装具や介護ベッドなど日常生活具の支給や貸与、税金の減額免除、公共交通機関運賃の免除・割引などが受けられます。

生活保護

病気で働けなかったり、所得が低く困窮していたりしている場合、生活扶助、医療費扶助などが受けられる生活保護制度があります。

生活福祉資金貸付制度

生活費や医療費が必要な、低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯などに都道府県の社会福祉協議会が低利で貸付を行っています。

民間の医療保険

民間の医療保険は入院・手術に対する給付があります。がん保険では、がんに対する給付が手厚くなっています。住宅ローンの団体信用生命保険でも、がんによる入院などで給付される保険があります。

がん相談支援センター

全国のがん診療連携拠点病院などにがん相談支援センターが設置されています。専門の相談員が、がん治療や生活全般にわたって相談に乗ってくれます。公的支援や助成制度に関する情報を得ることもできます。

治療と仕事との両立をどうする?

がんの治療には、入院や手術で仕事を休む必要があります。そのため、周りに迷惑をかけるからと自ら退職したり、がんになったことだけを理由に解雇されたりするといったこともあります。

「2013がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査」(*4)
仕事を継続できなかった理由 :
1位 仕事を続ける自信がなくなった(36.6%)
2位 会社や同僚、仕事関係の人々に迷惑をかけると思った(28.8%)
3位 治療や静養に必要な休みをとることが難しかった(22.9%)

仕事を継続できた理由:
1位 上司や同僚、仕事関係の人々など周囲の理解や協力?(43.9%)
2位 家族など会社以外の人々の支え (22.1%)
3位 自らの努力(専門的な知識や技術など)(13.8%)

仕事に関する悩み:
1位 体力の低下:(15.6%)
2位 病気の症状や治療による副作用や後遺症による症状(13.6%)
3位 通院や治療のための勤務調整や時間休の確保(13.1%)

がんになっても安心して仕事を続けるために必要だと思うこと:
1位 病状に合わせて勤務時間を短縮できる制度(68.1%)
2位 長期の休職や休暇制度(63.1%)
3位 がんやその他の後遺症、薬の副作用についての職場の上司や同僚の知識・理解(55.0%)
4位 病状に合わせて柔軟に配置転換できる制度 (47.0%)
5位 職場の人々の精神的な支え (42.8%)
6位 再雇用の制度(31.5%)

(「がんの社会学」に関する研究グループ 2015年9月)

上記の調査によると、がんになっても仕事を続けるために必要なこととして、職場の理解や支援と併せて、勤務時間や休業、復帰といった制度の改善が挙げられています。

制度を作るには時間がかかりますが、すぐに本人ができるのは、勤務先の就労規則や福利厚生制度で利用できるものはないか確認したり、人事への相談をすることです。

また、がん対策相談センターや医師、公的な労働相談の窓口も利用することができます。 治療法だけでなく、費用についてもひとりで悩まず、医師や看護師、病院の相談窓口などに相談してみましょう。

がんになっても仕事を続けるには、現状ではまだ制度やがんに対する理解が十分とはいえません。

しかし悩みを抱え込まずに、お金の不安を周囲や信頼できる相談窓口への相談し、情報収集に努めることが大切です。
また経済的な備えとして、がん保険をはじめ、民間の医療保険の利用も選択肢となるでしょう。

*1 「死因順位1)(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」厚生労働省「人口動態統計年報」HP

*2  「2003-2005年診断例の5年相対生存率」(国立がんセンター調べ)

*3 「がん対策加速化プラン」(平成27年12月)厚生労働省「がん対策加速化プラン」についてHP

*4 「2013がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査」
「がんの社会学」に関する研究グループ、2015年9月

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