交通事故に遭って「むち打ち症」になってしまったら…

交通事故で受けた「むち打ち症」は、もちろん自動車保険の補償対象です。しかし、そこには加害者側の保険会社との交渉が発生します。百戦錬磨の保険のプロと交渉し、しっかりとした補償を得るには、それなりの知識とテクニックが必要です。

【目次】
意外に怖いむち打ち症。ときには後遺症が残ることも
保険会社が提示する補償額に「ちょっと待った!」
弁護士特約を利用してトラブル回避
フェアな賠償額を受け取るために

意外に怖いむち打ち症。ときには後遺症が残ることも

車を運転中、後ろの車が追突。「車は傷付いたけれど体は何ともなく、とりあえずケガがなくてよかった」とホッとしていたら、数日後に痛みが出てきて、実はむち打ちになっていたというケースがよくあります。

むち打ちとは、正式には頚椎捻挫(けいついねんざ)といい、重い頭を支える首に不自然な負荷がかかって起こる首のケガです。交通事故の衝撃は人の頭部を揺らすため、軽い事故であっても大抵の場合、首は何らかのダメージを受けてしまうものです。

むち打ちの症状は首・肩・背中の痛み、首が回らない、頭痛など。神経に傷害を受けていると手足のしびれや倦怠感、めまいなども発症します。運悪く脊髄を損傷してしまうと、知覚障害や歩行障害といった重大な後遺症を残すこともあり得ることも。

基本的にはまず整形外科を受診。診察・検査を受け、医師の指示のもとで電気療法、牽引、マッサージなどのリハビリを行うことになります。

病院でなかなか回復せず、 整骨院や接骨院に行き、柔道整復師によるマッサージ、矯正などの治療で改善に向かったという方も多いようです。

病院、整骨院・接骨院、どちらにせよ、むち打ちの治療は長期に及ぶので、その間、きちんと保険で補償してもらうために次のことに気を付けましょう。

◆◆ POINT ◆◆

事故現場や事故直後の示談に安易に応じない

事故直後に軽いケガと思っていても、数日後に予想外の症状が出てくることもあります。示談は「治療の終了後、損害額を確定させてから」が鉄則です。早い時期の示談交渉は、本来受け取れる賠償額を下回ることがほぼ確実なので、応じないようにしましょう。

警察への届けは「人身事故」扱いに

身体に違和感があるのに「物損事故」扱いになっていたときは、医師の診断書を持参して早めに警察に行き、「人身事故」に変更してもらうこと。物損事故では治療費などが保険会社から支払われない可能性があるためです。

整骨院・接骨院で治療を受けるときは、事前に医師の診断書を用意

整骨院・接骨院では保険が出ないのでは」と心配する方も多いと思いますが、きちんと保険が適用されます。ただ保険会社によっては出し渋る場合もあるので、傷病名を記載した診断書をあらかじめ医師にもらっておきましょう。

保険会社が提示する補償額に「ちょっと待った!」

治療して完治できればベストですが、ある時期から治療をしてもあまり効果が出なくなることがあります。こうした状態を「症状固定」といい、これは保険会社の治療費打ち切りを意味します。

ある程度治療が続いた時点で、加害者の保険会社から「症状固定しませんか?」と打診されることがあります。治療が6か月以上続くと、後に記述する「後遺障害」として認定される確率が上がります。

そうなると引き続き補償する義務が生じるので、保険会社としては早めに治療を打ち切りたいのが本音。被害者側にとっては治療中に症状固定をすると、後遺障害の認定を受けられなくなります。ただ、そもそも症状固定は保険会社が決めることではないので、打診されても、まずは担当医や法律の専門家などに相談するようにしましょう。

むち打ちでも「後遺障害認定」を取れば、補償額が大幅アップ

「後遺障害」とは、交通事故で被害者が受けた障害が、治療が終わっても回復の見込みがなく、身体に残ることです。後遺障害と認定されるには、交通事故と症状に因果関係があり、医学的に証明できることが条件。申請には、症状固定と判断された際に医師が作成する「後遺障害診断書」が必要になります(整骨院・接骨院では作成できません)。

後遺障害は1級~14級までの等級があり、1級が最も重症、14級が最も軽症です。この等級に応じて補償金額が変わります。むち打ちは後遺障害でも軽度なので、取れても12級か14級ですが、重症のむち打ちで7級を取った実例もあります。

むち打ちの後遺症に延々と悩まされている方は、後遺障害と認定されたいところ。ただし、自覚症状のみでは認定されません。また、むち打ちはレントゲンや MRI で神経症状を診断しにくく具体的な証明が難しいため、認定のハードルが高いというのが現実です。

それでも、しっかりと裏付けのある医学的証明をクリアできさえすれば、後遺障害の審査に通過でき、保険会社から補償金が受け取れます。その際の損害賠償額は大きく増額します。

補償額が大幅に変わる、3つの基準

覚えておきたいのが、交通事故の損害賠償額の算定基準は以下の3つがあるということ。

*自賠責保険基準
被害者に最低限の保障を行うもの。国が被害者救済を目的に定めた保険制度なので、補償額が最も少ない。

*任意保険基準
各保険会社が定めている支払基準。これを基に保険会社の担当者同士が交渉をして 賠償額が決定される。

*裁判基準(弁護士基準)
裁判所で過去に認められた賠償額を目安にした基準。弁護士が交渉をすることで賠償額が決まる。

自賠責保険基準 < 任意保険基準 < 裁判基準の順で、段階的に賠償額は高くなります

たとえば、むち打ちで後遺障害の12級の場合の賠償額は、自賠責基準:93万円、任意保険基準:100万円(推定)、裁判基準:293万円。自賠責基準と裁判基準では200万円近く差があります。事故後の治療や生活にこの200万円は大きな助けとなるはずです。

◆◆ POINT ◆◆

多くの場合、保険会社は,自賠責保険基準よりは支払額を高くするけれど、裁判基準よりかなり低い任意保険基準での示談金額を提示してきます。ここで示談をしてしまうと、大きな損をしてしまうことがあります。

弁護士特約を利用してトラブル回避

身体にダメージを受けた被害者が、交通事故の補償について保険会社と直接交渉するのは、できれば避けたいもの。何といっても相手は事故処理のプロですから、言い値で押し切られてしまう可能性大です。

そこで、弁護士の出番。自動車保険(任意保険)には「弁護士特約」というオプションがあり、加入していれば、交通事故の際の弁護士費用は保険会社が負担してくれます。この特約では、多くの保険会社で弁護士費用の上限を300万円に設定しているので、弁護士費用はほとんどの場合まかなえるはずです。保険会社により違いますが、保険料は年間1500円~2000円程度です。

弁護士特約を使うメリット

スムーズな示談交渉で、被害者の精神的負担を軽減できることはもちろん、次のようなメリットがあります。

● 事故後の損害賠償の請求はもちろん、治療の打ち切りを要求された際の交渉、後遺障害認定の手助けなど、専門知識でサポート。

● 加害者の保険会社の示談案を精査し、不合理な点を指摘・反論してもらえる。

● 被害者の状況を冷静かつ合理的に主張し、公平な交渉ができる。

● 後遺障害等級に認定された場合、裁判基準を前提として示談交渉をするので、100万円単位で賠償金が増額する可能性がある。

弁護士特約は自動車保険だけでなく、火災保険や傷害保険の特約としても販売されているので、お持ちの保険の契約内容を一度確認してみましょう。

契約者本人のほか、配偶者(夫・妻)、同居の親族、別居の子供(未婚)、契約車両の搭乗者も、弁護士特約の使用が可能です。

フェアな賠償額を受け取るために

むち打ち症は、不快な症状がいつまでも続いたり、ときには重大な症状に進んだりすることもあります。交通事故に不幸にして遭ってしまったときは、基本的に「治療が終わるまで示談には簡単に応じない」こと。さらに一人ですべて解決しようとせずに、「状況に応じてプロの力に頼る」、つまり弁護士の助けを借りることです。

これは、損害を受けた被害者が「本来支払われるべき金額」を正当に受け取るためにとても大切なことといえるでしょう。

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