妊娠中の体はデリケート。この時期特有の体のトラブルが多く付きまといます。もし入院や治療が必要になったら、健康保険は使えるのでしょうか。
また民間の医療保険ではどこまでカバーされるのでしょうか。妊婦さんが気になる公的医療保険と民間の保険を解説します。
【 目次 】
◆ 妊娠中に気を付けたい体のトラブル
◆ 妊娠・出産の医療費は全額自己負担ってほんと?
◆ 民間の医療保険から給付金は出るの?
◆ 妊娠してからでも民間の医療保険に入れる?
◆ まとめ
妊娠中に気を付けたい体のトラブル
妊娠して出産までのおよそ40週、女性の体はさまざまな変化を遂げます。体全体で赤ちゃんの成長を助けるので、妊婦さんはいつもと違う不調に見舞われやすいもの。
妊娠中のおもなトラブルを、受診の目安とともに見ていきましょう。
妊娠悪阻(つわり)
個人差がありますが、5~10週くらいがピーク。重いつわりで栄養がとれない場合は、病院から入院をすすめられることもあります。吐き気がひどく、水も受け付けないときや、トイレの回数が少なくなったと感じたら、医師に相談することをおすすめします。
流産
流産とは妊娠21週6日までに胎児が母体の外に出てしまうこと。流産のうち85%は妊娠12週までに起こるといわれています。妊娠初期は特に注意が必要なので、出血や痛みを感じたら受診を考えたほうがよいでしょう。
早産
妊娠22~36週の間に胎児が産まれることをいいます。新生児のうち12%は予定日より早く生まれる早産児。普段の様子をよく覚えて置き、いつもと違うお腹の張りや痛みには注意しましょう。適切な処置で早期産を防ぐこともできます。
妊娠高血圧症候群
妊娠20週以降産後12週までに、妊娠が原因で高血圧を発症することを妊娠高血圧症候群といいます。医師のすすめた日程で健診をきちんと受け、目のちらつきやむくみを感じたら、医師に相談することをおすすめします。
帝王切開
母親のお腹を切開して赤ちゃんを出す分娩方法のことをいい、経腟分娩よりも帝王切開の方が安全だと考えられる場合に行います。手術の予定を決めて行う「予定帝王切開」と分娩中に何らかの原因で手術に切り替える「緊急帝王切開」があります。
参考:メルクマニュアル医学百科HP、公益社団法人 日本産科婦人科学会HP
妊娠・出産の医療費は全額自己負担ってほんと?
妊娠中の「病気」や「けが」は、妊娠していないときの病気・けがと同じく公的医療保険の対象になります。では妊婦健診や正常分娩、帝王切開の場合はどうでしょう。
妊婦健診は自治体の支援でカバー
妊婦健診は総額で10万円ほどになりますが、健康保険は適用されず全額自己負担になります。しかし各自治体から母子手帳とともに受診券やクーポン券をもらえるので、ほとんどの健診費用をカバーすることができます。公費負担額は全国平均で99,927円。詳しくはお住まいの自治体のHPなどに記載されています。
参考:厚生労働省HP「妊婦健康診査の公費負担の状況にかかる調査結果について(平成28年7 月)」
分娩費用は経腟分娩・帝王切開ともに出産育児一時金が出る
分娩費用は正常な分娩でも平均30~70万円と、高額になることが予想されます。妊娠4 か月を経過した出産であれば経腟分娩・帝王切開も生産・死産も問わず「出産育児一時金」の適用となり、健康保険組合または国民健康保険から42万円が給付されます。うち16,000円は、産科医療保障制度の加入料として引かれ、差額の404,000円を受け取れるので、かかった分娩費用から超過した分のみを支払うことになります。
帝王切開には健康保険が適用
帝王切開の手術にかかる費用は、健康保険が適用されます。地域や医療機関に関わらず緊急帝王切開は22万2000円(平成28年度改定診療報酬による)で、このうち3割が自己負担額になります。
ほかに入院中の差額ベッド代などは、健康保険適用外になるので自己負担となります。
また1か月間にかかった医療費が自己負担限度額を超えて高額になった場合「高額療養費制度」が適用になり、差額が免除されます。
参考:しろぼんねっとHP「平成28年診療報酬点数表」
民間の医療保険から給付金は出るの?
妊娠前から民間の医療保険に加入していた場合、妊娠や出産時に給付金は受け取れるのでしょうか。
公的な医療保険の対象(帝王切開や病気での入院など)になるものは、民間の保険でも給付対象になることが多く、給付金を受け取ることができます。
入院や手術が決まったら、保険会社に連絡し診断書などの必要書類を提出します。それらをもとに、保険会社が約款に照らして判断。給付額や対象は保険会社によって異なるので、問い合わせてみてください。
手術はそれぞれの約款に記されているものが対象となります。日帰り入院の場合、日帰り入院を保障していない保険では給付金は出ません。
妊娠してからでも民間の医療保険に入れる?
子どもの出産は命をかけた大仕事。万が一のことを考えて、妊娠を期に医療保険を考える人も少なくありません。妊娠中は告知事項に該当しなければ、妊娠27週までなら医療保険に入ることができます。
しかし妊娠や出産時は、通常時よりもトラブルが起きやすいと想定されます。このため妊娠がわかった後に加入すると「特定部位不担保」という条件付きになる可能性が極めて高いので、一定期間、妊娠・出産にかかる入院や手術では給付金が出ないことがあります。
特定部位不担保: 入院・手術の可能性がある特定の部位を、一定期間、保障の対象から外すこと。
帝王切開や子宮外妊娠、妊娠悪阻、妊娠高血圧症候群、早産などもこの期間中は保障されません。
出産後、2人目の出産のために加入するという場合も同様です。また妊娠していないときと同じく投薬・治療中は保険に入れません。
共済や少額短期保険には、妊娠後も加入できるものや、正常分娩も保障するものもあります。子どもが無事に生まれた後も自分にもしものことがあっては大変。保険会社の特徴を見て、早めに検討することをおすすめします。
まとめ
新しい命がお腹に宿るのはとても幸せなこと。しかしそれと同時に、妊娠・出産は体に大きな負担が伴います。これから妊娠の予定がある方は、万が一のことを考え予め保険に入っておくことをおすすめします。もし今加入できなくても貯蓄で備えをしておきましょう。