がん保険とは「貯金に保険をかける」もの ~がん治療にかかるお金を検証~

男性の 2 人に 1 人、女性の 3 人に 1 人はがんになるという時代。がんは決して他人事ではありません。がんと言えば「お金がかかるもの」と、漠然としたイメージを持っている人が多いと思います。

確かに治療費が思わぬ高額となって、経済的なピンチを招くこともあり得ます。まずは、がんになると実際いくらかかるのか、一般的な必要額を把握して、お金の面から「がん保険」について考えてみましょう。

健診から入院手術、術後治療まで、いったいいくらかかるのか

A さんは 45 歳の会社員。妻と高校生、中学生の子供の 4 人家族です。ある日、健診で肺に影が見つかり、その後、再検査(CT・血液検査)。さらに 1 泊 2 日の精密検査(胸腔鏡検査・MRI・PET・病理検査など)を受けた結果、残念なことに肺がんと確定し、手術を受けることになりました。この A さんの場合を例にして見てみましょう。

医療費の増大を抑制する国の政策のため、最近は入院が短期化傾向にあり、A さんも入院した 3 日後に手術、6 日後には退院という流れになりました。

健診~入院手術~退院までにかかった費用は

合計 32 万 5,000 円……………・(1)

手術後の経過も良く、無事退院の日を迎えましたが、これで終わりではありませんでした。退院後も再発・転移予防のために、抗がん剤治療を受けることになったのです。

抗がん剤治療は月々 6 万円(交通費含む)かかり、月 6 回ペースの通院が 3 年間続きました。

術後の抗がん剤治療にかかった費用は

6 万円×36 か月=216 万円……………(2)

治療費の総額は

健診から退院までの費用(1)+抗がん剤治療(2)=248 万 5,000 円……………(3)

これらの金額は「高額療養費制度」が適用された後のおおまかな支払額です。このほかにも差額ベッド代、入院中の日用品代、家族の交通費などもかかっているので、実際のところ A さんの出費はさらにかさんでいます。

がん保険で受け取れる金額はいくらになるの ?

A さんはがん家系ということもあり、大手保険会社のがん保険に加入していました。終身型の一般的なタイプです。

入院の短期化で入院給付金は少額にならざるを得ないと聞いていたので、まとまった金額が一度にもらえるがん診断給付金は充実した金額に設定。先進医療や化学療法などの特約も付け、保険料は月 5,000 円ほどでした。

今回 A さんが受け取った給付金の内訳は次のとおりです。なお、1 泊 2 日の精密検査は、入院扱いとなって給付金対象になりました。退院後、A さんは月 6 回×36 か月=216 回通院しました。

給付金の合計は

292 万 8,000 円……………(4)

注 : がん診断給付金とは、がんと診断確定された際に支払われるもの。ちなみに、悪性か良性かの識別が難しいがんもあり、この場合、手術で腫瘍を摘出し、病理検査の後に初めてがんと診断されるケースもあります。

このような「後診断」では、がん診断給付金が支払われないこともあるので、契約時には約款を十分に確認しましょう。

見落としがちなのが治療中の収入ダウン。これには特約で備える

A さんが支払った治療費(3)の 248 万 5,000 円と、給付金(4)の 292 万 8,000 円を見比べると、十分に黒字と思えますが、実はそうとは言えなかったのです。

術後の抗がん剤治療の副作用で、A さんは体調不良となり、休職を余儀なくされてしまいました。彼の月収は 30 万円。会社員なので、「傷病手当金」が適用されました。

これは会社員や公務員の病気やケガによる休業中の生活保障制度で、月給の 3 分の 2 相当額が健康保険組合や共済組合から給付されます。

収入ゼロにはならなかったとは言え、A さんの月収は約 20 万円と大幅ダウン。3 年間、月々 10 万円の減収となりました。

3年間の減収分は

10 万円×36 か月=360 万円……………(5)

というわけで、

がんを患ったことでの総費用は

治療費の総額(3)+減収分(5)=608 万 5,000 円……………(6)

給付金(4)は 292 万 8,000 円ですから、一目瞭然の大幅な赤字。子供 2 人を抱えた家庭には大打撃です。

これを救ったのが、月々少額だったので何の気なしにつけた「抗がん剤・放射線治療特約」(名称は保険会社により違います)。放射線や抗がん剤の治療を受けると、月 20 万円給付される特約でした。

特約での給付金は

20 万円×36 か月=720 万円……………(7)

最終的な給付金の総額は

給付金(4)+特約の給付金(7)=1,012 万 8,000 円

1,000 万円を超える給付金となったため、A さんは経済的に逼迫することもなく、余裕をもって治療に専念。やがて順調に回復し、仕事に復帰することができました。

注 : 「傷病手当金」の支給期間は基本的には 1 年 6 か月間ですが、傷病が治らないときは、加盟する健康保険組合によっては、「延長傷病手当金付加金」などの名称で、さらに最大 1 年 6 か月間給付金が支給される場合があります。

がんのために貯金を切り崩す生活にならないために

このように、がんは手術をすれば終了ということはない、やっかいな病気です。「5 年生存率」という言葉がありますが、がんの完治は 5 年が目安。つまり退院後 5 年間は再発・転移に備え、定期的に診察や検査を受ける必要があります。

がんの種類やステージにもよりますが、A さんのように、術後、通院で高額な化学療法(抗がん剤・放射線治療)を長期間受けるケースも珍しいことではありません。

また、健康保険対象外の先進医療を選べば、経済的負担は計り知れません。治療内容によっては多額のお金がかかる、それががんという病気の一面です。

治療費のみならず、収入ダウンや、治療に伴い派生する諸々の経費…。がんによって、家族のごく当たり前の生活さえおびやかされる可能性もあります。

これから学費がかかるお子さんのいる家庭はもちろん、いつかマイホームを持ちたい、老後は悠々自適に過ごしたいなど夢を持っている家庭で、預貯金を切り崩さざるを得ない生活は、不安材料として将来に大きな影を落とします。

日本人の死因第 1 位が「がん」で、年々患者が増加していることは周知の事実。自分がかかるかもしれない病気だから、しっかりとした備えを考えたいもの。

万が一がんになったとしても、貯金には手をつけず、しかも今までの生活レベルをキープする…。がん保険は、家族の大切な「貯金に保険をかけるもの」でもあるのです。

参考: 傷病手当金(全国健康保険協会)

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